2012年4月12日木曜日

ソーシャルコマースの可能性は?-Eコマースの変遷から読み解く(1)

4月10日付のあるサイトの記事で、2015年にはソーシャルコマースの世界市場規模が2.5兆円になるというリサーチ結果を紹介していました。(もともとはROAHoldingsが2011年2月に発表したリサーチをもとにしたもののようです)

ECの未来はソーシャルに(東京IT新聞2012年4月10日)

FacebookやTwiteerといったソーシャルメディアをECに活用する「ソーシャルコマース」(2面右下に用語解説)が拡大しそうだ。日本では先月、国内最大のSNSを展開するミクシィがDeNAと共同で「mixiモール」を開始。Facebookを通じたEC展開も国内企業から各種ツールが相次いで提供されるなど、盛んとなる一方だ。世界市場で見ると現在は4100億円程度の規模だが、2015年には2.5兆円(300億ドル)となる予想も出ている。

一方、同じく4月10日付Yahoo!ニュース(東洋経済オンライン記事)では、ソーシャルコマースの難しさに言及する記事が掲載されていました。

ミクシィが新規参入、SNS通販は稼げるか(Yahoo!ニュース(東洋経済オンライン記事)2012年4月10日)

だが最近は、ソーシャルコマースの難しさも明らかになっている。米国ではアパレルのギャップや小売りのJCペニーなどがFB上の店を相次いで閉鎖した。ソーシャルメディアのコンサルティングを手掛けるエイベック研究所の武田隆社長は、その理由を「FBやミクシィは個人が社交する場所。企業がそこに土足で踏み込むことに抵抗感を持つユーザーは多い」と指摘する。

はじまったばかりの取り組みですので改善の余地はまだまだありそうですが、そもそもソーシャルコマースは、従来のEコマースと何が違うのでしょうか。Eコマースの変遷をたどりながら、Eコマースの本質について少し考えてみたいと思います。

大変長い記事であるため、複数回に分けてお送りいたします。



Eコマース黎明期

ダイヤルアップ回線でインターネットに接続していた時代、Eコマースは限られたユーザーに対する限定的なビジネスでした。Amazon(米国では1994年、日本では2000年事業開始)や楽天(1997年事業開始)もいまでこそ小売ビジネスで大きな存在感を示していますが、当時のEコマースはまだまだ黎明期というレベルでした。

当時のEコマースの利用者像は、インターネットユーザーそのものだったといえます。つまり、テクノロジーに詳しく、インターネットを使いこなすコアな層。また、インターネット回線の整備が大学を中心に進んだこともあり、大学関係者はインターネットに比較的慣れ親しんでいました。Eコマースは、まだビジネスとしても手探りだった状況で、当時のインターネットユーザー像である技術に詳しいマニアや大学関係者などが、店頭になかなか並んでいないような書籍やPC関連商品(ソフトウェアなど)を「指名買い」する場として発展してきました。

したがって、この時期のEコマースでは、一般のお店の店頭に並んでいないような専門的なものを取り揃えていることが成功要因でした。

Eコマース普及期

2000年前後にADSLによるブロードバンド接続が一般的になってきたことで、状況が一変します。インターネットに常時接続しておけるようになり、またユーザーインターフェースの改善、技術の進歩により、インターネットは家庭にあって当たり前のものとなります。

インターネットがリーチできる消費者のパイが広がったことで、Eコマースもより広いユーザーが利用するものとなりました。それに伴い、書籍やPC関連商品だけでなく、食品や飲料、日用雑貨といったものが購入されるようになり始めます。多くの企業がEコマースに参入し、たくさんの種類の商品が売買されるようになりました。

また、同じ2000年前後には、@cosume(1999年スタート)や価格.com(前身は1997年スタート、2000年から価格.comとしてスタート)などの口コミサイト、価格比較サイトが現れました。これらの口コミサイト、価格比較サイトは、ユーザーが情報を持ち寄って商品を横並びで比較することを可能にし、賢い消費者を誕生させることとなりました(いわゆる「プロシューマー」というもの)。また、同じ商品が複数のオンライン店舗で販売されているため、消費者は価格を比較して1円でも安いものを買うという消費行動をとるのが当たり前になりました。

このような状況下では、(1)できるだけ安い価格を提示すること、あるいは(2)価格競争を避けるために品ぞろえに工夫を凝らすこと(独占的に扱える商品を持つ、あるいは他が扱っていない商品を探し出して流行らせる)が重要な成功要因となりました。さらに、(3)集客や顧客のリテンションのためにDM等を使ったプロモーションを実施したり、(4)一人あたりの購入単価を上げるために顧客の情報をパーソナライズしレコメンデーションを表示する、などのプロモーション面での努力が必要とされるようになりました。

本日はここまで。

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