2012年4月4日水曜日

レコメンデーションエンジンの限界とライフスタイル提案型ECの可能性

昨日の記事、ソーシャルコマースの可能性でも少しふれた、パーソナライズに関してもう少し触れておきたいと思います。

個人的に、Amazonの「この商品を買った方はこちらの商品も買っています」機能について、私はあまり信用していません。

たとえば、ビジネス書を買うとしましょう。何か1冊の本を選ぶとき、たいていはその本に対するレビューの内容を判断材料にして買います。もちろん、その本の下に「この商品を見た人は以下の商品もチェックしています」といくつか同じジャンルの他の本がレコメンドされていれば、それもチェックします。うまくいけば、もっとニーズに合った本が見つかるかもしれないからです。しかし、同一ジャンルの中で何冊も買うわけではありません。同じジャンルの本を何冊も買うより、そのジャンルの中で最も自分のニーズに合った本を買いたいのです。つまり、レコメンデーションは、購買促進要因というより、よりよい本に出会うための「セレンディピティ(思いがけない出会い)」を起こすための一手段だということです。

この、よりよい商品(上記の例では本)に出会うための「セレンディピティ」を実現する手段にはいろいろな種類があります。

  1. レコメンデーションエンジン
    • ユーザーのサイト閲覧履歴・購入履歴をもとに、計算し生成されるアルゴリズムに基づくもの。
  2. ユーザーによるおすすめの提示
    • ユーザーが、一つのテーマに沿って、様々なジャンルの中から関連する商品・サービスなどを集め、編集して提示するもの。Amazonで言えば「リスト」にあたる。ECサイトがアフィリエイトに力をいれるのは、これを目的にしているから。
  3. ECサイトによるプロデュース
    • ECサイトの運営者が、様々なジャンルの中から関連する商品・サービスなどをピックアップし、適切な関連付けを行って提示する。ライフスタイルの提案型のサイトがこれにあたる。

上記の1と2は、ECの世界ではあたりまえです。

3については、実は、昔からあるマスメディア主導型の流行発信や、百貨店によるブランド・商品のマーチャンダイズの延長として、様々な企業がチャレンジしてきた分野でした。しかしコンテンツの作りこみコストや目利きのできる人材の確保、投資対効果が得られないなどの問題から、Amazonや楽天のように1・2で成功しているサイトの規模と同規模の成功には至っていません。

しかし、より確かな筋の専門家やプロに近いヘビーユーザーがおススメする商品やそのセレクトは信頼性が高い。口コミサイトに人気が集まったり、All AboutOne Topiなどのように、ネット上の情報の集積をうまく交通整理をしてくれる人が必要とされているという事実は、間違いなく3の可能性を示しているものだと考えられます。

そういう意味では、ソーシャルコマースは、1・2に、3の要素を付加する手段ものです。

「いいね!」「持ってる!」「欲しい!」などのボタンを通じて、ユーザーは無意識的にレコメンデーションに寄与しています(1)。しかも、ユーザーのタイムラインやユーザーのプロフィールページを見れば、その人がおススメしたものを一覧することもできます(2)。さらに、従来のECサイトが持っていたサイト閲覧履歴・購入履歴データと、ユーザーのライフログが結合することで、ライフスタイルの分析が可能になるでしょう。SNSの提供する機能にもよりますが、ソーシャルネットワークの文脈にうまく溶け込ませる形でライフスタイルを提案しながら商品を紹介することができるようになるかもしれません(3)。

とはいえ、私は、3を実現するには「人」の力がもっともっと必要になると考えています。技術の進歩、ソーシャルメディアの進化が、2を3に近づけ、普通の人が専門家として3を実現する可能性が高まっていると考えます。一部で話題になっている、「キュレーション」というキーワードがその核になる考え方です。「キュレーション」については、またの機会に考えたいと思います。

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