2012年3月29日木曜日

顧客の声を集めることで価格訴求型の商品の魅力を再発見する「サゲリク」

西友で実施されている、サゲリクというキャンペーンをご存知でしょうか。


13,000品目の商品の中から、顧客が値下げしてほしい商品をTwitterでつぶやく、という手軽なキャンペーンです。30以上のツイートが集まると、店舗で値下げ検討対象になるようです。(2012/3/28でキャンペーンは終了しましたが、一部の商品の値下げは継続されるようです)

このキャンペーンの面白いところは顧客の声をオープンな形で募集する形のキャンペーンでありながら、EDLP(毎日安売り)が売りの西友らしく、顧客の声の反映対象が「価格」であるという点です。

しかし、顧客の声を事業に反映させるやり方は、従来にも存在しています。

たとえば、かなり昔からあるサイトに空想生活というサイトがあります。

空想生活
http://www.cuusoo.com/about/

では、インターネットユーザーが自身の「こんなものがあったらいいのに」というアイデアを投稿し、そのアイデアに他のユーザーの投票を集めることでそれを商品化する企業とのマッチングを行います。投票数が多ければ多いほど企業にとっては魅力的なアイデアであり、仕様や価格面での交渉がしやすくなるわけです。

また、無印良品のくらしの良品研究所では、顧客の声をオープン化し、商品化への対応の様子を時々刻々と伝えています。

くらしの良品研究所
http://www.muji.net/lab/

くらしの良品研究所のサイトを見ていると、現在販売されている無印良品の商品に対する顧客の「こんな風に変えてほしい」の意見に、「検討中」「開発中」「ご報告」などの各ステータスで、無印良品がどのように取り組んでいるのかを表しているかがわかります。また、新たな商品を開発するときに、顧客の意見を聞く座談会を実施し、座談会への参加者を募ったり、座談会の様子、それが商品開発にどう反映されていくのか、工場の様子や実際に使った顧客の声などのレポートをのせているケースもあります。

空想生活にしろ無印良品にしろ、ポイントは、企業と顧客の間で顧客の声の収集および結果のフィードバックが、
  • 潜在的な顧客のニーズの掘り起し
  • 商品の魅力(機能性や付加価値)の醸成
  • 商品の開発・改良を物語化することによる商品の魅力の訴求力強化
など、いわゆる価格競争とは異なる効果を生み出しているという点です。
そして、顧客が自ら商品の開発・改良に力を貸すことで、
  • 顧客と企業/ブランドとの結びつきの強化
にもつながっています。

では、西友のサゲリクの場合はどうでしょうか。実は、サゲリクでも、顧客が価格決定に部分的に関与していることで顧客と商品(企業/ブランド)の結びつきが強化されているのではないか。私はそう考えています。

もともと食品や日用品は価格が購買要因の重要な位置を占める商品です。商品の愛着・忠誠心の強さがあっても、それと価格を天秤にかけたときに価格が勝ってしまうのがごく日常の世界です。しかしサゲリクでは、自分が欲しいと思った商品を値下げしてくれるのですから、価格の訴求力ではなく商品そのものの魅力や機能性が評価されて、値下げ要望につながるわけです。

そういった意味では、サゲリクでは、空想生活や無印良品とは異なる「価格」をキーにしながらも、
  • 商品に対する顧客の評価(商品が適切に顧客ニーズに対応しているかどうかの評価)の顕在化
  • メーカー主導で行われる価格コントロールにより見えにくくなっていた商品の魅力(機能性や付加価値)の再発見
  • 顧客同士が「なぜその商品を安くしてほしいのか」を共有しあうことによる、商品の魅力の訴求力強化
という効果を生み出しています。(これらの効果は、上記で空想生活および無印良品が企業と顧客の間で声を収集しフィードバックする仕組みの中で生み出す効果と対応していることに注意してください)

さらに、サゲリクで自分が気に入っている商品に投票し、それが30票以上獲得すれば値下げされる可能性があるのです。西友に行って買わない理由がありません。そのような意味で、
  • 顧客と企業/ブランドとの結びつきの強化(「そのお店で買う」ことに対する忠誠度の強化)
も実現していることになります。

西友のサゲリクが表すことは何か。 それは、「価格訴求型」の商品・サービスであっても、顧客の声を集めることによって、間接的に商品の魅力を明らかにすることができるということです。

インターネットにより複数の店の価格が比較されそれが価格競争の激化を招いているわけですが、これは商品の魅力がうまく伝わっていなかったり、顧客のニーズに対し商品のスペックが高すぎて価格にそれが反映されていることの裏返しとも言えます。顧客の声をうまく活用することで、顧客のニーズを適正に反映した、適正な価格の商品を作り出すことができるのではないでしょうか。

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