2012年4月12日木曜日

ソーシャルコマースの可能性は?-Eコマースの変遷から読み解く(4)

大変長い記事であるため、複数回に分けてお送りしています。


前回、今後のEコマースの方向性として、次の4つの点について言及しました。

  1. Eコマースのメリットを充実させる仕組み
  2. Eコマースの欠点を補う仕組み
  3. コンテキスト消費を促す仕組み(オウンドメディア)
  4. コンテキスト消費を促す仕組み(ソーシャルコマース)
3と4のコンテキスト消費とは何か?-これについては説明が長くなるので、また次回として、今回は1と2について考察していきます。

1.Eコマースのメリットを充実させる仕組み

Eコマースのメリットをさらに充実させて、Eコマースの拡大を目指す方向性です。たとえば、「価格」や「検索性」などがあげられるでしょう。

「価格」の取り組みでは、招待制ブランド品セールのGILTが目をひきます。

月9の視聴率も落とす!? 招待制ブランド品セール「ギルト」の魅力とは(2009年11月26日)
キーワードは「知人からの招待制」「正規流通のブランド品」「最大70%OFF」。月曜だけではなくほぼ毎日21時からぴったり54時間セールが行われるが、カートにキープできる時間は10分だけ(チェックアウトしないと取り消される)。たいてい2時間で売り切れ、残っているのはXSかXLのサイズだけになるが、やがてそれもなくなる。
安さの秘密は、アパレルブランド側が何らかの理由で売りさばきたいものを直接買い付けしているから。いわゆる「わけあり」なのです。

「わけあり」には、楽天も目を付けています。

“楽天市場は少なくとも今の倍以上に成長する”国内最大手が見据えるこれからのEC(2010年4月19日)
例えば、“訳あり”商品の人気に火が付いているが、藤田氏は「理由も無く安いのは不安。“訳あり”は安い訳がないと売れない」と見ている。その点、ECは安い訳を店頭よりもじっくりと説明できるメリットがある。これまではテキストと画像だけだったが、動画も使うことができるようになり、商品説明という点でのECの優位性はさらに増すと見込んでいる
そのほかにも、くまポンやグルーポンなどのフラッシュマーケティングなど、価格を武器にEコマースを拡大する仕組みは検討に値します。

「価格」以外では、「検索性」も利便性を向上しする一つの手段です。たとえば、ZOZOタウンでは、

日経新聞2011年1月17日朝刊
千葉県習志野市にある約2万平方メートルの物流拠点の一角で、1点ずつ身に着けたモデルを社員カメラマンが撮影する。襟の形のアップなど10回ほどアングルを変える。サイトでは婦人靴ならヒールの高さから検索できるなど、かゆいところに手が届くサービスを盛り込んだ。
とあるように、「実際に自分の目で確かめられないから」「試着ができないから」ネットで洋服や靴は買えないという常識を、「検索性」を高めることで逆に覆し、検索できるからこそブランド横断で自分の欲しいものを探せるという強みに変えています。

このように、従来からEコマースの強みとされてきた特徴をさらに拡充し、利用者のリテンションを実現してEコマースを拡大していくことができるのではないでしょうか。

2.Eコマースの欠点を補う仕組み

Eコマースの欠点として、「実際に自分の目で見て確かめられない」「今すぐ使いたいのに手に入らない」というものがあげられます。これを解決することで、Eコマースを進化させるのが2つ目の方向性です。つまり、真の意味でのクリック&モルタルの実現です。

クリック&モルタルはすでにご承知のこととは思いますが、念のため書き添えますと、「実店舗とEコマースの両方で事業を行う」形態のビジネスです。たとえば、ビックカメラは実店舗を持ちながら、ネットショッピングも運営しています。とはいいつつも、オンラインでの売り上げは全売り上げの5%程度(記事参照)ということですから、ほとんどが実店舗のビジネスで成立していることになります。

ではなぜ、実店舗のビジネスをEコマースに取り込むことが重要なのでしょうか。

経済産業省が発表している電子商取引に関する調査報告では、2010年のEC化率(全商取引を分母としてEコマースで取引された割合)は2.46%にすぎません。つまり残りの97.5%は実店舗でのビジネスで取引されているわけです。Eコマースを拡大するにあたり、パイの大きな部分に手を付けていかざるをえないでしょう。

実際、Yahoo!やGoogleも、実店舗とインターネットを結び付ける方向性を示しています。

実店舗の商品を検索できる Google ローカルショッピング開始(2011年9月16日)
商品名を検索すると、付近の取り扱い店舗と価格が表示され、営業時間や店舗までのルートなどもそのまま調べることができます。iPhone / Android からの利用も可能。ちかごろは実店舗で品定めをして、ネットで価格を調べ買うというような購買行動も見られますが、これからはネットで調べて安い実店舗へ向かうというような行動も生まれるかもしれません。
まだまだはじまったばかりの取り組みですし、プラットフォーム側(Yahoo!やGoogle)がどのように出るのかわからないので、吉と出るか凶と出るかも判断しかねるのですが、クリック&モルタル戦略を実現して一躍存在感を増やす企業が出てもおかしくない状況と言えます。

余談ですが、米国の調査で、とモバイルで事前調査をした人の72%がワイヤレス機器を店頭で買っている(モバイル以外は55%)とのこと(記事参照)。ここからも、ネットで調べて実店舗で買う、という消費行動があることがうかがえます。

長くなってきましたので、今日はここまで。

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