2012年4月2日月曜日

変革を恐れることなかれ

先週末、無事に最終出社を済ませ、送別会を開いていただきました。
幹事の方が気を利かせてくれて、職場の方だけでなく、すでに転職していた先輩方も送別会に呼んでいただいたおかげで、非常に懐かしい面々で一夜を過ごすことができました。本当に感謝です。

ところで、転職した方とお話をしていて感じたのは、先週末に私が辞めた企業だけでなく、多くの企業や日本社会全体が閉塞感につつまれているということです。そして、その原因に「変化に対する異常なまでの恐怖」があるように感じました。

製造業にしろサービス産業にしろ、過去の成功体験にしがみついていて、現実を直視できていません。市場の変化への対応速度が遅く、事業構造や戦略ドメインを変更し、今後の企業の予測図を立てスピード感を持ってしなやかに動いていくことができません。さらに、目先の利益やビジネス規模の拡大だけを追い求めて、長期的に顧客と付き合うことで、安定的に少しずつ顧客も自分たちも共に成長していくという発想がない。

このことは、総じて、
  • 視点が内向き(社内/国内)で、本来対峙すべき相手に向き合っていない
  • チャレンジを奨励する仕組み、失敗を許容する仕組みがない
  • 中長期的な視点で利益を評価するしくみになっていない
など、企業全体の「マインドの変革」が追い付いていないことが根本的な原因です。

市場がグローバル化する以前の、「追い付け、追い越せ」の時代であれば、会社が一致団結して、資源を集中的に投下し、事業を拡大していくことは正しいやり方だったのかもしれません。しかし、現在は違います。原材料の調達も、製品を生産する拠点も、人材の獲得も、販売の市場も、すべてがボーダーレスです。

もちろん、日本の企業もこれに倣い、生産拠点を移したり、海外での販売の比重を上げたりと様々な努力を重ねてきました。それは間違いなく事実です。ですが残念なことに、「変化に対する恐れ」を捨てきれず、「仕組みはグローバル、マインドはドメスティック」というねじれを起こしたまま、グローバル化の時代に突入しているといえます。

たとえば、断食の習慣のあるイスラム教徒向けに、タイマーをセットすれば冷蔵庫の庫内灯がつかないようにできる冷蔵庫を開発し、大ヒットさせた韓国企業。一方の日本の白物家電はどうなっているか。海外で安く生産する仕組みは、企業の生産現場の担当者が時間をかけて苦労に苦労を重ねて作り上げてきたことでしょう。しかし、市場をよく見ていれば、充実した機能はなくとも、本当に必要とされている機能と購入意欲を沸かせる価格があれば、新しい市場を開拓できたはずです。 これは、「つくれば売れる」「技術大国ニッポン」のマインドを変えることができなかったことによる、機会喪失の例です。
参考
グローバリゼーションの新潮流、求められるリーダーの「決断と実行」

たとえば、革新的な製品を生むことは、既存の製品を改善・改良することからのみ生まれるわけではありません。「靴下を履く感覚で履ける靴」をめざし、「パーツを縫製する」のではなく「靴全体をニットのように編む」という逆転の発想で背革新的なランニングシューズを完成させたナイキ。おそらく日本のスポーツメーカーは、いかにパーツを少なくするか、縫い目の強度を保ったまま軽量化するかという、既存製品のバージョンアップに腐心しており、ナイキの製品発表を見て驚いたに違いありません。
(ちなみに、靴を編む技術は日本の企業のものだとか。おかげで新興国に生産拠点を置かず、日本で雇用が生まれるそうです) こちらは、「いまある製品を疑うこともない」「カイゼンこそが命」というマインドが命取りになった例といえるでしょう。
参考
米国のナイキが取り戻し、ソニーが失ったもの画期的新製品「フライニット」が暗示する米国の復活(2012年3月30日)

日本人は、ずっと島国の中で、さらに言えば同じ共同体の中で繁栄してきた歴史を持っています。大陸の国のように常に他国からの侵略を恐れることなく、今あるコミュニティを維持することが比較的容易な国でした。逆に言えば、よそ者さえ排除できれば、自分たちの生活に破たんをきたすことはなかったのです。変化に柔軟に対応することよりも、今持っているものをよりよく変える。日本人が得意とする分野は、そのような分野なのかもしれません。

しかし、現状は待ったなしです。企業/社会が変革を実現していくことでしか、世界の中で生き残っていくすべはありません。そして、実は変革を促すのは個々人の力でもあります。自分の会社の中で、(経営陣やほかの事業部など自分以外の人が)提案した改革案を、自らの保身の思いから(たとえそれが無意識であったとしても)頭ごなしに否定していないか。今一度、自分に問い直す必要があります。

もう一度言います。個々人がリスクを取りながら、変革を望まない限り、どんなによい変革のためのプランが作成されても、それが組織に受容されることはありません。変革を望み、そのためにアクションし、正しい判断をしていくことが求められているのです。

リスクと向き合うのも、怖くないですよ。ご参考までに。

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