2012年4月5日木曜日

好きな人を信頼して買う「ひととなり」消費

昨日のポストでは、よりよい商品に出会うための「セレンディピティ(思いがけない出会い)」を実現する手段を下記の3つのタイプに分け、今後のECの可能性を3にあるということを書きました。

  1. レコメンデーションエンジン
    • ユーザーのサイト閲覧履歴・購入履歴をもとに、計算し生成されるアルゴリズムに基づくもの。
  2. ユーザーによるおすすめの提示
    • ユーザーが、一つのテーマに沿って、様々なジャンルの中から関連する商品・サービスなどを集め、編集して提示するもの。Amazonで言えば「リスト」にあたる。ECサイトがアフィリエイトに力をいれるのは、これを目的にしているから。
  3. ECサイトによるプロデュース
    • ECサイトの運営者が、様々なジャンルの中から関連する商品・サービスなどをピックアップし、適切な関連付けを行って提示する。ライフスタイルの提案型のサイトがこれにあたる。

今日は、3に関してもう少し詳しく見ていきたいと思います。

昨日のポストでも、事業者が商品のセレクトやプレゼンテーションを行う形式の販売方法は、従来型のものを売るビジネス、たとえば百貨店などが行ってきたことであることを述べました。メディアが流行を作り出し、それに事業者が乗っかる、というビジネスモデルもあります。たとえば、雑誌で「この春はちょい甘ミリタリー」などのキャッチコピーを作り、トレンドを生み出すことで、販売につなげるというやり方です。これは、販売者と商品のセレクト・プレゼンテーションの実施者は別の事業者ではありますが、消費者ではない事業者側が、何をどんな見せ方で売るのかをコントロールしているという点で、従来型のものを売るビジネスの一形態であるということができます。

このような従来型のビジネスモデルは、流行がマスで動いている時代には大変効率の良い方法でした。流行がわかればそれに乗っかればいいだけの話ですし、流行がわからなくても「女子高生にはルーズソックス」「男性にはスポーツカー」などのように、年代や性別、住んでいるところ、ある程度の趣味嗜好などがわかれば、何をどのように売るべきかがわかったからです。

しかし、みなさんもご存じのように、時代は変化し、消費の仕方もがらっと変わりました。

  • 消費者が情報を手にし、吟味して選ぶことができるようになった
  • 無名な商品・サービスでも、ソーシャルネットワークの力で急に人気商品・サービスになりうるようになった
  • テレビへの接触時間が減る一方、携帯電話やインターネットへの接触時間が延び、一律の流行を生み出すことが難しくなった
  • 不安定な経済情勢なども手伝い、望むと望まざると関係なく、「大学→就職→結婚→住宅購入→子育て...」のような一様なライフスタイルだけが是ではなくなった
つまり、マスという消費者の塊はもはや存在していないのです。ですから、商品やサービスを売る側やマスメディアが流行を作り出し、その流行に合わせていろいろなものをセットで販売していく方法は、コストを食う割に利益の少ない、割に合わない商売になってしまったわけです。

だからと言って、商品やサービスを売る側がなにもできないわけではありません。その鍵が「ソーシャルメディアの活用」です。

先日書いた記事「ソーシャルコマースの可能性」でも述べましたが、たくさんの人が「持ってる」「欲しい」ボタンを押したから売れる、というソーシャルメディアの使い方は、あまり意味がないように思います。先ほども述べたように、もはや消費者は「みんなが持っているから欲しい」という考え方をしないからです。

そこで私がおススメしたいのが、「ひととなり消費」です。「ひととなり消費」とは私の造語で、「その人が好きで、その人がおススメしているものだから買う」という消費スタイルです。たとえば、例として少し古いですが、アメリカのマーサ・スチュワートが有名です。彼女は、料理家としてキャリアをスタートさせ、料理だけでなく、園芸やクラフト、インテリアなど様々な分野でトータルなライフスタイルを提案し、事業としています。アメリカの主婦に大変な人気があり(現在は下火のようですが)、マーサ・スチュワートという人を好きで、彼女の提案する商品を買うという消費スタイルがあったようです。

マーサ・スチュワートほどになるともはや「ひととなり」という言葉は遠くなってしまいますが、彼女の事業が成功した時期と現在とで違うのは、ソーシャルネットワークの存在です。ソーシャルネットワークがあるからこそ、普通の人が「ライフスタイルを提案する」ことができます。それも簡単に。

ただただ、ソーシャルネットワークに「自分が好きな映画や音楽やスポーツについてコメントすること」と「日々の生活の中で気付いたこと」などのコンテンツを投稿すれば、ソーシャルネットワーク上に、その人の「ひととなり」が浮かび上がります。もしかしたら、時々その人と会って話をすること以上のことを、ソーシャルネットワーク上のコンテンツが語ることもあるかもしれません。ですので、商品やサービスを売る側がやることの第一段階は、ソーシャルネットワーク上でその人の「ひととなり」を知ってもらい、自分のライフスタイルとの近さや親しみを覚えてもらうことです。そして第二段階として、そういったコンテンツの投稿を継続しつつ、商品・サービスに関するおススメを並列に表示させていくのです。

この「ひととなり消費」にさらに一ひねり加えるならば、商品・サービスを売る側が、その売り子をソーシャルネットワーク上で育て、増やしていけばおもしろいでしょう。つまり、商品・サービスの専門家である「売り手」と、情報を全く持たない「一般消費者」の間の、商品・サービスに関して知識があり消費者にとって信頼性の高い口コミやレビューを書くことができる「プロ消費者(プロシューマー)」を、売り手が育てていくというアイデアです。現在も、口コミサイトやレビューサイトで、レビューワーの格付けがされていますが、その人たちを積極的に育て、売り手の側に引き込むのです。もちろん、レビューワーは公平な立場でなければなりませんので、一般の消費者に納得してもらえる形で公平性を担保する必要がありますが。

いかがでしょうか。「ひととなり消費」

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